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煙を嗜む贅沢な時間。西洋アンティークの喫煙具

皆さん、こんにちは!「SILVER-LUG」店主の渡邊です。

アンティーク小物の中にタバコや葉巻関連の喫煙具があります。
近年はタバコを吸う方が少なくなっていることもあり、喫煙具自体をあまり見かけなくなってしまいました。
しかし、アンティークの世界を覗いてみると、そこには驚くほど美しく工芸品としても素晴らしいアイテムがたくさん存在します。
単なる道具としてではなく、ひとつの文化や歴史を物語る存在として、西洋アンティークの喫煙具はとても魅力的なカテゴリーのひとつです。

今日は、魅力あふれるアンティークの喫煙具達をご紹介いたします。


1.喫煙方法や喫煙文化の変遷

19世紀頃の上流階級の紳士にとって、喫煙は社交の場でのおしゃれな嗜みでした。
しかし、女性のいるリビングルームでの喫煙はマナー違反とされ、男性たちは「スモーキングルーム」と呼ばれる専用の部屋で、食後の葉巻やパイプを楽しんでいました。
スモーキングルームは、男性だけがくつろげるプライベートな空間であり、重厚な家具や美術品、そして美しい喫煙具が置かれていました。

時代が移り20世紀に入ると、紙巻きたばこ(シガレット)が主流になり、喫煙文化はより一般に広まっていきました。
それに伴い、喫煙具のデザインもシンプルで携帯しやすいものが増えていきました。

パイプ(Pipe)
16世紀末にイギリスにたばこが伝来した当初から、庶民の間で広く普及しました。その後、19世紀末には再び庶民のたしなみとして定着します。
中流階級以上ではブライヤーやメシャム石など高価な素材のパイプが使われ、その人の個性や富を表現するアイテムでした。

嗅ぎタバコ(Snuff)
17世紀末から18世紀にかけて、特にフランス宮廷を中心にヨーロッパ全土に広まり、18世紀にイギリスで流行の頂点となり主に上流階級に愛用されました。
煙が出ないため社交の場で嗜むのに適していたこと、また嗅ぎタバコ入れ(スナッフボックス)が富と洗練のステータスシンボルとなったことが、その流行を後押ししました。

葉巻(Cigar)
19世紀初頭から中頃にかけて、イギリスの上流階級の社交界で大流行しました。
1829年の税法改正で税率が引き下げられると、より多くの人が手にできるようになりましたが、依然として「紳士の嗜好品」というイメージが強く、社交の場で好まれていました。

紙巻きたばこ(Cigarette)
19世紀中頃から後半にかけて、クリミア戦争(1853-1856年)をきっかけに兵士の間で広まり、その後一般にも普及し始めます。
 当初は手巻きが主流でしたが20世紀に入り製造技術が発展し、手軽で安価になったことで、あらゆる階級の人々に急速に普及していきました。
第一次世界大戦後は、タバコを吸う女性が解放的な女性の象徴とされ、女性の間でも喫煙が一般的になっていきました。

2.西洋アンティークの喫煙具あれこれ

「喫煙具」と言っても、その種類は様々です。
ここではアンティークでよく見かける4種類のアイテムをご紹介します。

パイプ

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木や粘土、メシャム(海泡石)など、様々な素材で作られた喫煙具です。
特にヴィクトリア時代には、装飾が施された美しいパイプが多く作られました。
シャーロック・ホームズが愛用しているイメージが強く、英国アンティークの喫煙具として一番人気のあるアイテムです。

嗅ぎ煙草入れ(スナッフボックス)

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嗅ぎ煙草とは、粉末状にした煙草を鼻から吸引して楽しむ無煙の煙草です。
「スナッフボックス」と呼ばれる携帯用の小さな箱に入れた粉末状の煙草をひとつまみ取り出し、鼻から軽く吸い込んで楽しみます。
銀や金、象牙、鼈甲などの素材で作られており、美しい装飾が施されています。
優雅にさっと取り出せるように、蓋の開閉などにも工夫が凝らしてあります。

ヴェスタケース

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ヴェスタとは、マッチが発明される以前に使われていた、蝋でできた細長い棒状の火付け道具のことです。
マッチが発明されたあとも、マッチを入れるケースをヴェスタケースと呼び、底の部分にマッチを擦るためのヤスリ状のギザギザ部分があルノが特徴です。
シルバー製で美しい彫金が施されたものが多く、携帯用の小さなアクセサリーとしても使われていました。

シガレットケース、シガーケース

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タバコを携帯するためのケースです。
銀やエナメル、象牙といった素材が使われ繊細な彫刻や装飾が施され、内部にはタバコや葉巻が汚れないように金メッキがされているものが多いです。
葉巻(シガー)を持ち運ぶためのシガーケースと呼ばれるケースや、スモーキングルームのテーブル等に置かれる大きめのボックスもあります。


この他にも、葉巻の先端をカットするための「シガーナイフ」、紙履き煙草を直接手で持たずに挟んで使う「シガレットホルダー」、煙草の灰を受ける「アッシュトレイ」などがあります。

ライターが普及したのは19世紀末以降ですし、火器の輸入は手続きが煩雑なため日本では手に入りにくくなっています。

 

3.アンティークの喫煙具の魅力

パイプや葉巻、タバコ関連の喫煙具は当時の上中流階級の紳士たちの定番のアクセサリーであり、「スモーキングルーム」での社交における各人の個性を表現するおしゃれな道具として美しい装飾が施されているものがたくさんあります。

近年はタバコを吸う方が少なくなっていますので、アンティークのアイテムの中ではあまり人気があるカテゴリーとはいえません。
最近は喫煙具の広告が禁止されているため、当店のようなオンラインショップではも取り扱いにくくなっているのも事実です。
そのため、他のアイテムに比べるとその品質に対してアンティーク市場での相場が安めのものが多い傾向にあります。

喫煙具だからといって必ずしも喫煙用途として使わなければいけない、というわけではありませんので、一つの美しい工芸品として他の使い方で楽しむこともできます。

シガレットケースは大きめのものであれば、名刺入れやカードケースなどとして使うこともできますし、ヴェスタケースはピルケースとして使ってもいいでしょう。スナッフボックスは小さなジュエリーケースや、小物入れとしても使えます。
あるお客様はのど飴などを持ち運ぶケースとして使っているそうです。

ただ飾っておくだけでも、アンティークらしい雰囲気を出す小物としてとても印象的なアンティークアイテム達です。
歴史と美しさを兼ね備えたこれらのアイテムを、ぜひ日々の生活に取り入れてみませんか?


まとめ

いかがでしたか?

今回は、西洋アンティークの喫煙具の世界をご紹介しました。

単なる道具としてではなく、その背景にある文化や歴史、そして職人の卓越した技術を感じられるのが、アンティークの大きな魅力です。
もしご興味を持っていただけたなら、ぜひ当店のオンラインショップを覗いてみてください。
あなたにとって運命の一点が見つかるかもしれません。



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